田中邦穂が育成就労制度に物申す!
特段のお願いとして心の底から申し上げたいことは、
私たち監理組合と企業(技能実習実施者)が32年もの長きにわたって培ってきた
実績に配慮して下さい、ということです。
その実績を加味反映し、育成就労制度への移行は
「実績・実態別導入」をお願い致します。
せめてそうでなければ、今まで「外国人研修制度」から始まり
「技能実習制度」に携わってきた32年間もの努力・実績は何だったのか、
制度を頑なに守ってきたことは何だったのかと、政府に対する強い憤りと共に、
今後の生産活動に対する意欲が大きく喪失します。
今まで実践してきた歴史を無視されゼロスタートにするのではなく、
積み上げてきた実績をふまえての
「実績・実態別導入」に、
ぜひご支援お願い致します。
1. 制度変更の背景と現状
政府が掲げる「外国人の権利保護」「地域社会との共生」「選ばれる国づくり」といった理念は極めて重要です。
しかし、これらの課題の原因とされている
「技能実習認定の欠格・取消し処分」や
「失踪者問題」
については、事実に基づいた冷静な理解が必要です。
① 技能実習認定の欠格・取消し処分
この処分を受けた企業や団体は、すでに罰を受け、制度的に排除されています。
しかもその件数は2024年度で56件、対象事業者3,750件のうち処分された件数はわずか1.5%>にすぎません。
残る98.5%は問題なく技能実習事業を運営しており、これこそが 「実績・実態別導入」を求める根拠
のひとつです。
② 失踪者問題
法務省の資料によれば、令和6年の技能実習生総数509,373人のうち、令和6年における技能実習生総数509.373人の内同年の技能実習生失踪者合計が6.510人で割合にして
わずか1.3%です。
残りの98.7%はうまくやっているのです。
失踪理由として法務省が公表している内容を見ると、その多くは
賃金・労働条件など法令違反 とのことでした。
その他には人権侵害等が挙げられていて、もちろん小さいからと言って無視はできませんが、小さい数字(1.3%)を
ことさら「監理組合や企業の責任だ、或いは日本語の資格を持っていないからだ」を全体のことのように誇張して取り扱っているように思えます。
ましてや「日本語力不足が失踪につながる」といった一律の見方は誤りであり、 日本語の資格要件設定の再考が必要です。
③ 国別の実態
失踪者の国別データでは、ベトナムとミャンマーが全体の
約8割(79%)
を占めています。
したがって、問題解決の方向性は 「国別・実態別の対策」であり、
一律の規制強化ではありません。
2. 優良な企業と優良な監理組合への配慮について
優良な企業と優良な監理組合が、現行「技能実習制度」で培ってきた
実績に何卒ご配慮下さい。
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① 「優良な監理団体の要件」を満たしていること:
私たちは、毎日、毎月、毎年、及び3年ごとにこのような要件に基づき日々管理・監理し、
外国人技能実習機構(OTIT)に報告・点数評価を受けています。
6割以上の合格点を取り、優良評価をいただきながら事業運営を行っております。
逆に言いますと、毎年これだけのことを継続し、
技能実習認定の欠格・取消し処分を一度も受けていない実績
を認めていただきたいのです。
法令を十分に理解し、実践してきた企業・監理組合は、評価に値するものではないでしょうか。
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② 失踪者ゼロ・または低水準を維持してきた努力:
3年以上にわたって失踪者を出していない努力・実績も、どうかご評価下さい。
このような実績に裏付けられた
優良監理組合・優良技能実施者を認め、そこで雇用される育成就労外国人を増やすことが、
日本の雇用環境の改善と制度の安定運用につながると考えます。
この実績を踏まえ、優良監理組合・優良技能実施者には、職員数による受け入れ企業数・外国人数の雇用制限を撤廃して下さい。
今まで通りで問題ありません。
我々優良監理組合・優良技能実施者企業には、制限される理由が思いつきません。
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③ 職員数による受け入れ制限・代替要件の根拠について:
さらには、監理支援機関職員数による受け入れ機関・外国人数の制限について、回答は「監理団体の現状を踏まえて設定した要件であり、ご理解いただきたい」
「分野の特性に応じて代替要件設定することを可能としており~」などと言われていますが、
監理団体の現状とは具体的に何か、制限しなければならない多くの具体例・事例を示してください。90数%のうまくいっている現状を踏まえて、今まで以上に制限する理由がどこにあるのか、
「代替要件を設定することを可能とする」とは、うまくいっている監理団体の何%に対して、何を代替できると言われているのか、全く理解できません。
抽象的な言葉ではなく、うまくいっている90数%と比較して理解できる具体例を示してください。 無制限ではありません。問題の無い今まで通りの雇用制限でいいのではないでしょうか。
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④ 不正行為の具体的内容と日本語資格要件の関係について:
不正行為の具体的内容として、次のことが詳細にあげられています。
A. 監理団体の不正行為〔二重契約・技能実習計画との齟齬・名義貸し・虚偽文書の作成・行使・暴行・監禁等・旅券・外国人登録証明書の取上げ・賃金の不払い・その他人権侵害行為・告義務違反・失踪者の多発・不法就労者の雇用・労働関係法規違反・その他外国人の就労に係る不正な行為・再度の不正行為に準ずる行為〕
B. 「技能実習認定の欠格・取消し処分」となった重大な理由や、
C. 失踪者発生理由としてあげられている下記のもの、
〔最低賃金違反・契約条件違反・不適当な控除・過大控除・割増賃金の不払・36協定未締結・残業時間の不適正・その他の人権侵害(暴行・脅迫・監禁・違約金・強制預金・旅券・在留カード・預金通帳等の取上げ・正当な理由のない帰国の強制・ハラスメント等)〕
等々多く上がっていますが、日本語資格要件に関わる項目がどれだけあるでしょうか。
日本語資格を持っていれば防ぐことができた項目は、どれだけあるのでしょうか。
回答の中で「相当講習を受講すれば就労可能とあるが、入国後1年のみで取得できなければ帰国となる」
「受け入れ機関が日本語能力向上のために必要に措置を取っていただくことは必要」とありますが、
日本語向上のためにはいままでも日々やっており、検定試験にもつど挑戦させています。
優良な企業と優良な監理組合は、日常の関わりの中で、監督者・技術指導員・生活指導員がフォローをしています。
また監理組合には現地人(技能実習卒業生を含む)スタッフも複数人常駐しており、会社や現場や寮にも定期・不定期に連絡・訪問を行っています。
さらに現地送り出し機関もつどフォローを行い、体調不良やホームシックなどには家族を含めて迅速に対応しています。
結果として、失踪者の発生する隙間もありません。
これが多くの実態(98.7%)であり、まさに「安定かつ円滑な在留活動を行ってきた」長年の実績です。
実績から言い切れるのは、「日本語資格取得」と「勤労意欲」とは別物であるということです。
さらに現行の「特定技能1号」では、技能実習2号を良好に就労した外国人には試験(技能・日本語)は免除されています。
国は、この技能実習での就労期間でその能力は備わったと判断している証拠だと思います。
彼らは現に大きな問題もなく、真面目に社会貢献しています。
日本で働きたいと願う者を、少なくとも一般外国人よりも素性が分かっている技能実習生を、
「難しい日本語資格取得」という入口で閉ざすべきではないと思います。
仕事内容と同じように生活に必要な日本語も、今まで通り入国後に研修で指導し、現場指導を加えることで、
圧倒的多くの実習生が3~4年間うまくやっている実績があります(98.7%)。
その後の生活や社内環境や就職活動の中で、必要となれば放っておいても日本語資格を取ります。
「日本で働きたいと希望する外国人に、就労前(来日まで)に日本語能力A1相当以上の合格、又は認定日本語教育機関での講習受講を義務付けています。無資格者は入国後1年以内に取得とのこと。資格取得できなければ帰国となる」 この日本語資格要件も、実績・実態別導入をして下さい。介護関係以外は撤廃して下さい。今まで通りで問題ありません。実績が示しています。
以上のように、優良な監理団体・企業は、
法令順守・教育支援・フォロー体制・地域連携をすでに徹底しており、
日本語資格の有無よりも、現場での指導体制・支援の継続こそが実効性を持つことを強調いたします。
3. 日本語資格要件について
① 監理団体による日本語支援と共生活動の実践
優良な監理団体として認定されるためには、定期的な監査体制、職員研修、技能検定の合格率、法令遵守の状況など、日常の業務一つひとつが厳しく評価されています。
その中でも特に重視されているのが、外国人技能実習生への日本語支援や地域社会との共生活動です。多くの監理団体が、受け入れ企業と連携しながら次のような取組を続けています。
- 日本語学習支援:受け入れ企業に対して日本語教育の支援体制を整え、学習機会や教材を提供している。
- 地域交流の促進:地域行事やボランティア活動など、実習生が地域社会と関わる機会を積極的に作っている。
- 文化理解の推進:日本文化や生活習慣を学ぶ機会を企画・実施し、実習生の生活適応を支援している。
さらに、技能検定への協力、帰国後のフォローアップ、法令違反を防ぐためのマニュアル整備なども含め、監理団体の活動はすでに教育・地域・文化の各面で高い水準にあります。
これらの取組こそが、現場で培われた信頼と成果であり、制度を支えてきた大きな実績なのです。
② 文部科学省による地域日本語教育の推進
現在、文部科学省では「外国人材の受入れ・共生のための地域日本語教育推進事業」を実施し、自治体や教育機関と連携して日本語教育の体制整備を進めています。
このような国の施策と現場の取組を組み合わせれば、入国前の資格要件に頼らずとも、在留中に十分な日本語教育が可能です。
制度の目的である「権利保護」や「地域共生」は、監理団体と行政が協働して支援を重ねることでこそ達成できると考えます。
③ 国・自治体・事業者の連携による総合的支援
2025年7月に全国知事会が発表した提言でも、日本語教育の充実は国・自治体・事業者が一体となって進めるべき重要課題として示されています。
実際、各地域では日本語教室の整備や講師派遣、オンライン教材の導入など、すでに多くの仕組みが動き始めています。
私たち監理団体も現場の最前線でこの動きに連携し、「働きながら学ぶ日本語支援」を継続してきました。これこそが、日本社会全体での共生を進める現実的な方法だと確信しています。
以上の実績と取組を踏まえ、育成就労制度の導入にあたっては、これまでの努力を正当に評価し、
「優良監理組合・優良技能実施者への職員数による雇用制限」および
「入国前日本語資格取得の義務化」については、
実績・実態に応じた柔軟な導入をお願い申し上げます。
現場の声と経験に基づく制度こそが、安定した共生社会の実現につながります。
4. 外国人犯罪に関する誤解
昨今、外国人犯罪が増加しているとメディアなどで報道されることがありますが、
実際の統計を見ると、その印象とは異なる実態が明らかになります。
全体としての外国人犯罪率はごく低く、制度全体を否定するような議論には根拠が乏しいのです。
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① 犯罪率全体は5%に過ぎない:
2020年度における外国人全体の検挙人員は9,529人。
うち来日外国人が5,634人、その他の外国人が3,895人でした。
同年の全体検挙人員182,582人のうち外国人はわずか約5%です。
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② 外国人受入れ拡大とともに犯罪率は低下:
1990年代と比較して、外国人人口は約130万人から370万人へと3倍近く増加しました。
それにもかかわらず、刑法犯検挙人員は1994年の12,000人から2023年には9,726人へと減少しています。
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③ 国別の実態:
2020年度の国籍別統計では、ベトナム2,931件(31%)、中国2,666件(28%)で、
この2か国が全体の6割を占めます。
これは特定の構造的要因に起因しており、外国人全体の傾向とは言えません。
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④ 技能実習生の国籍構成:
2022年度末時点で、在留外国人は3,075,213人。
このうち技能実習生は324,940人で、ベトナム人が176,348人と約半数を占めています。
続いてインドネシア45,919人、フィリピン29,140人となっています。
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⑤ 来日前の借金問題:
ベトナム人技能実習生は、ほかの国籍の人よりも来日のための借金が多いといいます。
法務省の調査によると、「あなたは来日するために母国で借金をしましたか?」という質問に対し、
約8割のベトナム人が「はい」と回答しています。
また、来日前に送出機関へ支払った費用の平均は656,014円で、
他国よりも明らかに高く、犯罪や失踪の大きな一因となっているのが実情です。
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⑥ 各国の費用比較:
送出機関への平均支払いは、中国578,000円、カンボジア571,000円、ミャンマー287,000円、
インドネシア231,000円、フィリピン94,000円とされています。
ベトナムのみ100万円を超える例も多く、特異な状況であることがわかります。
これらのデータから明らかなように、外国人犯罪を「制度全体の問題」として論じるのは誤りです。
真に解決すべきは、送り出し国での高額な渡航費や借金構造などの背景要因であり、
現場で真摯に取り組んできた監理団体や企業を責めることではありません。
結びに
以上の事実と実績を踏まえ、育成就労制度の導入にあたっては、
優良監理組合・優良技能実施者への雇用制限撤廃と、
入国前日本語資格要件の撤廃
を強く求めます。
これは日本の産業を支え、共に働く外国人の未来を守る道であると確信します。